phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_01banner

目利きの達人・ハイロックさんに訊くモノ選び&山遊びの美学

 Other

本業は、グラフィックやパッケージなどのデザインワーク。一方、自ら管理人を務める情報サイト『 HIVISION 』では、ガジェットや家電、日用品、文具、インテリアといったプロダクトをはじめ、お菓子やコーヒーなどの食品、はたまた本から音楽、ドラマ、映画まで、グッドデザインやハイセンスなモノやコトを縦横無尽にピックアップするなど、メディアクリエイターという肩書きでも活躍するハイロックさん。その磨き上げられた審美眼によるアイテム選びのこだわり、そして趣味として親しむマウンテン アクティビティや自然に触れる魅力を訊くため、彼のアトリエを訪ねました。

スキーは幼少の頃から身近な遊び
phenix は当時からトップブランドだった

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_02

ーーハイロックさんが管理人をされている『 HIVISION 』では、アウトドア関連のウェアやギアが紹介されることも少なくありません。そのなかで以前、phenix のアウターもリコメンドされていましたが、ブランドにどのようなイメージをお持ちですか?

「世間が思うイメージと変わらず、スキーウェアのトップブランドという認識ですね。僕自身、ウィンタースポーツの盛んな群馬で生まれ育ち、幼い頃からスキーに親しんできました。高校時代にはスキー場で泊まり込みのアルバイトもして、その給料もすべてスキーに注ぎ込みましたね。それくらいスキーはバリバリですし、とても身近な遊び。スキーショップに行けば必ず phenix の取り扱いがあったので子供の頃から知っていますし、当時からゲレンデでもよく見ましたね」

ーー現在 phenix ではスキーウェアで培ったノウハウを活かし、トレッキングをはじめとするマウンテン アクティビティに向けたウェア、またタウンユースにフォーカスした派生ブランド alk phenix を提案するなど、スノースポーツ以外のアイテムも充実しています。

「実は、そういったスノー以外の側面を知ったのは、ここ1~2年ですね。ただ本格アウトドアブランドがシティウェアに参入するのは、他のメーカーを見ても結構ありがちな流れで、僕個人としては正直あまり好きな傾向ではありません。しかし alk phenix は、立ち上げに際して実力&実績のある外部のファッションデザイナーを招集するなど、しっかりとシティウェアを作り込むという気概も感じて、それでハマリましたね。片手間ではない、本気なところがグッときます」

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_03

ーー今日、着ていただいているフリースジャケットはマウンテン アクティブ カテゴリーのアイテムですが、昨今はこうしたアウトドアウェアをタウンユース用として購入する方も増えています。ハイロックさんはいかがですか?

「僕も普通に取り入れています。けど、デザイン性が盛り込まれたアイテムはあまり好みではなく、これくらいロゴが主張せず、飾らないプロダクトが好き。基本的にはスポーツウェアの範疇からハミ出ることなく、あくまでギアであることを忘れていない感じがツボですね」

キャンプ用品はキャンプコーナーで買わない
そして性能より、使いたくなる見た目が大事

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_04写真提供:MONOQLO

ーー『 HIVISION 』では、キャンプ用品を紹介されることも多いですよね。

「これも群馬という土地柄が関係していて、やはり山が多いので、子供の頃から夏の行事として身近にキャンプがありました。だけど東京に暮らしてからは、めっきりご無沙汰になっちゃって。あと一度始めるとトコトンまで凝ってしまう性格なので、新たな趣味を増やしたくない気持ちもあって。ほら、キャンプって道具が命の遊びじゃないですか。こうしてアトリエや自宅のリビングだったり、色々なモノを揃えて、道具をアップデイトしているけど、キャンプってもう1つリビングを構えるようなものだから、当然大変になる。だから意識的に手を出さないでいたんです。それが2年ほど前、キャンプ好きの友人に誘われて行ったら、案の定ハマッちゃって(笑)。こだわらなければ手軽に済むのでしょうが、テントでも鍋でも吟味を重ねた究極のモノばかり買っちゃったから、かなりお金も掛かりましたね」
phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_05

ーーそうしたキャンプギアを選ぶときのポイント、こだわりを教えてください。

「ほぼ100%見た目で決めています。だから、どんなに性能が優れていても、見た目が気に入らなければ買わない。逆に言えばアメリカのモノ、特にアメ車なんかは代表的だけど、使いづらいくらいが可愛かったりもするし。持論ですが、一般的に便利とされているモノが、その人にとって本当に便利とは限らないと思うんですよ。100個のポケットがついているバッグを便利に思う人もいれば、ポケット1つのほうが便利な人もいるように、自分にとっての便利を選ぶという感覚ですね」

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_06Photo:ハイロック

「もうひとつこだわっているのは、テントやBBQコンロなどは別として、キャンプコーナーでは買わないということ。例えば、キャンプ用品の売り場でランタンを物色すると、キャンプ然と仕立てられたデザインしかない。だけど照明の売り場を探せば、もう少し格好いい懐中電灯やランプが見つかったり。専門のコーナーは、大きさや機能などのベンチマークを知るうえで参考書代わりにする程度ですね。別にアマノジャクではなく、自分の視野を狭めたくないんです。だから他のコーナーまで全部チェックして、それでもキャンプ用に作られたギアのほうが良ければ素直にそれを買います。

あとはモノ個体ではなく、景色で見ることも大切にしています。美術館の白い空間にポツンと展示するわけではないので、その周りに置いてあるモノも作用してくるから、置く場所や使う場所を想定して、シーンでモノを捉えるよう心掛けていますね」

ーー他にも親しまれているアウトドア アクティビティはありますか?

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_07写真提供:MONOQLO

「カヌーもやっています。むしろカヌーをしたくてキャンプをしている感じ。湖のほとりにキャンプサイトを設置して、朝イチでカヌーに乗るんです。早朝は風がなく、波が立っていないので、そこをスーッと進んで行くと本当に気持ちいい。漕ぐというより、水上を滑る感覚。カヌーは水面の瞑想とも呼ばれており、クルマや自転車、飛行機、そして船とも違う快感を覚えます。本栖湖など富士五湖に行くことが多いのですが、湖上から望む富士山は最高に素晴らしいですね」

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_08Photo:ハイロック

ーーハイロックさんが考えるアウトドアの魅力とは何でしょう?

「これは僕の性分ですけど、まず道具選びが楽しい。だから極論、アウトドアに出掛けなくても満足できちゃう(笑)。で、山に向かうのは、選んだ道具が正解だったのか否か、その答え合わせの場になってます。あと、ずっと東京で生活をしていたので、キリキリと張り詰めた都会の緊張感みたいなものから束の間だけでも解放されて、自然と向き合うことで心のバランスを取るような感覚。それが魅力ですかね。何でも揃っている都会暮らしの便利さと、ある意味で不便なキャンプという対極な体験を楽しんでいるかもしれません」

頭を使い、手を動かすことは、すべての基本
そこにクリエイティブや多くの気付きがある

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_09Photo:ハイロック

ーーアトリエの敷地の一角には、自家菜園の『ハイロックファーム』もありますね。

「世の中にはあらゆる職業がありますが、僕は農家や漁師といった食べ物に関わる人たちが一番偉いと思っていて。要は命に直結する順番で、僕のようなデザイナーだったり、エンターテインメントというのは、暮らしを豊かにする力はあるけれど、存在しなくても人間は生きて行ける。だから自分も、そうやって命を作り、保てる人間になりたいと思って畑を始めたんです」

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_10

「そして実際にやってみて、作物を育てるって、とてもクリエイティブなことだとわかった。僕は『自然農法・わら一本の革命』という本に感銘を受けて、自然農と呼ばれる方法で育てているんだけど、農薬はもちろん、肥料もやらなければ雑草も抜かない。水も自然に降る雨だけ。つまり自然の野原と同じ環境を作って育てるんです。農薬を使わなければミミズが増えて土のなかを耕してくれるし、雑草の根も土を耕してくれる。そうやって色々な植物と生物が共存すると土壌に色々な菌が発生して、互いに作用し合って野菜が病気にかかりにくくなり、いい循環が生まれるんです。そしてより美味しく、栄養のある野菜が穫れる。人間が介在しなければしないなりに、自然って上手く回って行くんですよ。ただ農業という仕事になると、一定の収穫量を保ち、安定供給しなくてはならないから、そうも言ってられず、人間が介入するのは仕方のないこと。僕がやっている、これくらいの規模の菜園だったら間違いなく自然農が最良なんです」

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_11

「こうして畑から学んだのは、人間が手を出したり、手を加えることは、必ずしもベストじゃないということ。それが自分の生き方のヒントにもなった。自分の性格としては、ちゃんと世話をして、雑草も抜いて、ピシッとキレイな畑にしておきたいし、虫に食われた葉っぱを見るのももどかしい。ただパッと見は美しくないけど、自然農の考え方が美しく、それが自分の美意識を上回った。1から10まですべてを決め込むのではなく、自分でコントロールできない領域もあるんだって。雪が積もれば野菜は潰れ、葉っぱを食べに毎朝飛んで来る鳥もいる。そういうのも含めて地球は回っているんだなぁって、この狭い畑から実感しています」

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_12

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_13

ーーこのアトリエは、もともと喫茶店だった空間をリノベーションして作られたとお聞きしました。しかも、ほとんどDIYで。キャンプもDIYも、そして野菜作りも、利便性や効率を求めるだけでは得られないプリミティブな面白さ、本質的な悦びがあるという点で通ずるように思います。

「信念と呼べるほど大それたものではありませんが、頭を使う、手を動かすという行為は日頃から心掛けています。それらは人間が生きるうえでの基本であり、クリエイティブの基礎だと思うんです。だけれど現代は技術の発展もあり、手を動かさず自動化されていることも多く、頭を使わないで済む場面も増えている。だからこそキャンプでもDIYでも野菜作りでも、もちろん日常生活においても、頭を使うこと、手を動かすことを、ごく当たり前の行為として実践している感じ。それを面倒に思ったことは一度もないし、むしろクリエイティビティを刺激されたり、ストーリーを見たり、たくさんの気付きがありますね」
phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_14

phenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e9%82%8f%e6%a6%8a%e5%88%80%e9%82%8f%ef%a3%b0%e8%ad%9a%e3%83%bbphenix_3%e8%ad%9b%e3%83%bb%e8%9e%b3%e6%ba%bd%e5%88%a4%e8%9c%92%e3%83%bbphenix_3_15

Photo:Shunsuke Shiga
Composition & Interview, Text:Naoyuki Ikura
Produce:Rhino Inc.

  Online Store